情けなさを垂れ流して、聞かせて
2026/6/23
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Diary
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Life

気づけば外はもう暗くなっていて、目も背中もお尻も脚ももう身体中が痛くて、わたしはたまらない気持ちになってテーブルの上に散乱した本やメモをかき分け、スマホを見つけ出すと、玄関を飛び出した。
朝起きて顔も洗わないまま、パソコンに向かい、そして夜になる。誰にも会わず、閉じこもって、ダイニングテーブルとベッドの間だけを行き来して。固くなったパンやらグミやらをかじって食いつなぎ、それなのに漢方は3回飲んで体を労った気になって。鼻の頭と右のほっぺにぽつり赤くなったニキビが情けない。

夜空はまだほんのり青さを残し、黒い海は小坪の家々の明かりを点々と映し出す。
追い詰められることが本当に苦手だ。書いて書いて、やっと出した原稿が、次から次に戻ってくる(修正のため。当たり前のことだ)。まだまだ書かなきゃいけない原稿も、調べものもあるのに、一歩も進めないまま今日が過ぎ去って、また次の日もきっと進めない。
わかってる。整理をすれば、一つひとつちゃんとやっていけば、大丈夫なのだ。なのにわたしはすぐに見失う。パニックになる。そんな時、前は恋人が宥めてくれた。「大丈夫」と言い聞かせてくれた。だけど今は、自分で自分を宥めなきゃいけない。甘ったれるな、ばかばかばか、ばかやろーと唱えながら長谷の方へ坂を下っていく。
坂の下の信号で、手を繋いだカップルとすれ違う。前から来た車が目の前で止まって、赤ちゃんを抱いた母親が降りてくる。その夫が車を駐車場に停められるよう、わたしは道の隅っこに避ける。
みんな、“誰か”がいるのだ。こんなにつらくて苦しくて、惨めなのに、わたしには、“誰も”いない。そんなばかみたいな気持ちになる。よくないパターンだ。134号線を歩きながら、iPodのイヤフォンを耳に押し込んだ。
ふと楽になってしまおうか、と考えることは、よくあることだ。きっと誰だってそんな時があるんだろうと思う。だけど、絶望することは簡単で、絶望はなにも語ってはくれない。一方で、ほんの一筋の光みたいな、生きる希望があるならば、言葉は生まれる。わたしは、その言葉にすがりたい。誰かに、何かを伝えられる。そのほんの一筋の光を失いたくない。

そんなことを思い詰めていたら、唐突に「竜とそばかすの姫」の曲が流れてきて、ぼろぼろ涙が溢れてきてしまう。
怒り恐れ悲しみ
抱えきれぬ夜
でも口にできない
一人で生きてゆけるとあなたは言い放つけど
本当は何度も何度も自分に言い聞かせた夜があったのでしょう
聞かせて 隠そうとするあなたの顔を
見せて 隠れてしまうあなたの心
聞かせて どんなことからでもいい最後まで聞くから

そんなふうに、言って欲しかったのだなと思った。
そして、そんなふうに、わたしは誰かに言いたい。隣に“誰か”はいないけど、見えない、どこかわからない、でも確かにいる“誰か”に、それが伝わればいいと思う。その“誰か”のためにわたしは書くよ。その人にとって、わたしの言葉が、この歌みたいに響いてくれたら。一筋の光になって、今日を生きようと思ってくれたら。
わたしは、人通りが少ないことをいいことに、鎌倉までの道をもう涙がとまらないままぐずぐずいいながら歩き続けた。こういう情けなさを垂れ流しながら、なんとかかんとか生きる夜もある。




